当の紅天女候補である姫川亜弓は入院したまま、北島マヤに至っては月影の葬儀以来その所在さえはっきりしていなかった。 「・・・知らん。」 書類に目を通していた速水は、上目遣いに水城の顔を見ると、興味が無いとでも言うように、言った。 「・・・知らんって・・・。真澄さまはそれ大女優北島マヤは、マネージャーが運転する車に乗るでもなく、タクシーを拾うでもなく、 普通に地下鉄の駅に向かい、普通に電車に乗り、コンビニでパンとヨーグルトと シュークリームを買い、そして自分のマンションに帰っていった。 なんだ。こんな「え、失礼ですが、女優の北島マヤをご存じないんですか? 『紅天女』の・・・」 「ああ・・・彼女、女優さんですか。私は、テレビをあまり見ないもので・・・」 今や日本を代表する大女優を知らない。そんな人間がいるのか。 真澄は驚いた表情を急いで消しながら、隣をうかがった
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